第9話「残香 -scent-」その2

人殺しは優しくなれない
あるいは、染みついた狂気は簡単にはぬぐえない。



歓楽街。片隅の鉄塔で仕事仲間のルチアーノに別れを告げるマドラックス
「(ここから抜け出せば)優しくなれる?」
問うた言葉はそのまま自問へ。ここではないどこか*1ー 人殺しとは違う自分になれる場所を無意識に探す彼女は記憶喪失も手伝って、17歳になっても自分を捉えられない。


所変わって、最後の大仕事のためナフレス保養地へ向かうルチアーノ。
しばし呟く「ここは平和過ぎる」という台詞で、私は、戦争に身を置いた人は染みついたせん妄からそう簡単には逃れられない哀しさを知る。胸中の鬱屈した平和への情景は、彼にとって苛立ちでしかないのだろう。



ラスト。志半ばで倒れたルチアーノなどつゆ知らず、道ばたの死んだ雀を足もとに通りすぎるマドラックスには、この作品の主題である“日常の狂気“が浮かんで消える。




らくがきはマドラックスのパジャマ姿。

だらしないかっこうの女の子っていいよね!


Madlax the bible (Hobby Japan mook)

Madlax the bible (Hobby Japan mook)

*1:ちなみに英語吹き替え版では自分の居場所を語るルチアーノさんがしきりに"anywhere"とか呟いているので、それが自然とテーマソングの「nowhere」と重なりストーリーの導線がわかりやすくなっています。