駄文ふたたび

秋口に書いて、うかばなくて放っといた文章up。公開にすればなんか糸口見つかるかもって淡い期待も込めつつ。

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旧国道沿いの休耕田を通るたび、実を一つとることにしていた。べつにジュズダマが好きだったわけでもなく、ただそういう習慣になっていたのだ。つつじが咲いていれば蜜を吸う、綿帽子があれば種を飛ばす、それと同じ。しげみの前を通るたびに、いつも一粒ちぎってポケットに入れた。

ジュズダマの「実」は、はじめは初々しいうすみどり色で、成熟すると黒褐色になり、さいごには白くなる。実はかたく、つやがあり、中空で糸を通すことができる。


閑話休題


その日、わたしは電車に乗っていて、ガラスに映ったむこう、刻々と迫る宵闇を見ていた。せき立てられるように無数の鳥が舞う。電車の中で、わたしはしかめ面をしていた。とりわけトンネルの中ではそうで、それは真っ黒な窓に自分の姿が―似合わない学生服を着せられた貧弱な娘が―、轟音と共に映し出されるからだった。
まもなく、電車は停車駅に着いた。
看板向こう、石段のかげから、ハトがあらわれた。頭から胸にかけて金色にぬらぬらひかる、美しいハトだった。ハトは首をもたげて、薄暮に照らされた青い虹彩でじっとわたしを見た。オリーブ色のつやつやしたからだに、赤紫色の翼を持っている。ふしぎな、なつかしい気持ちがして、わたしもハトをじっと見つめた。