ブレンダンとケルズのひみつ
シネマ・アンジェリカにて一日限りの上映会!なんと監督も舞台挨拶にきてしまう。という訳で、上映30分前に行ってみました。すると、建物の外にはみ出す人の列。遅れをとったか、と慌てましたが、入ることができました。客席はほぼ満席。客層は20〜40代メイン、もっと上の方もちらほら。男女比は半分半分くらいでしょうか。印象だけどクリエーター系の人が多かったように思います。
以下、内容の感想と妄想。
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美術ボードが動いているような映像美は圧巻でした。ただでさえ綺麗な絵が、形式美を伴って動いたり話したりするのでとにかく目が忙しかったです。壁画に描かれた世界そのものなのに、登場人物たちの身体には、ちゃんと木漏れ日が模様を落とし、寒空の下で息をすれば白くなる。紐解かれた古い神話の世界に、新しい時間が流れているのを一緒に目撃しているようで、わくわくしました。
そんなわけで、手の込んだ美術ばかりに目がいってしまう映画ですが、出てくる人物たちの描写は丁寧でした。中でも、主人公ブレンダンの叔父さんは、主人公の夢を阻む存在でありながら、悪役として描かれていないところに惹かれました。極端にのっぽにデザインされた彼の長身は、時にブレンダンを圧倒し、威厳を示すけれど、その背中には常に孤独がつきまといます。彼の背負う苦悩と、甥のブレンダンに対する愛情。惨劇のあとの、彼が抱え込んだ後悔の念を思うと・・・。彼に救いが用意されていたことが、実は何よりもほっとした事だったりします。
さて、アシュリンは可愛いですね。アシュリンの髪はたいていキム・ポッシブル*1の髪のように、ティア・ドロップ型を保って動くんですが、まー動く動く。急ぐときに四つ足になってしまうのも魅力的。
ブレンダンはアシュリンと冒険を重ねて友だちになるのですが、ブレンダンは戦乱の混乱もあって修行の旅に。再びブレンダンがふるさとに戻ってきたとき、ブレンダンは立派な青年になっているのに、アシュリンは変らないまま。。。その二人が森を進んでいくシーンは、なんともいえず切なくなります。アシュリンの軽やかな笑い声は、ブレンダンの背中を押すように昔のままで・・・。
『You must go where I can not...』
アシュリンが、かつてブレンダンを助ける為に歌った魔法の歌。アシュリンのテーマなのでしょう。このシーンではインストゥルメンタルが流れました。森で永遠の時を生きるアシュリンが、人間のブレンダンに感じている、ちょっとした尊敬の思いも含まれているように思えました。(考えすぎかもですが)
舞台挨拶してくれたTomm Moore監督*2は、やっぱりブレンダンによく似てました。拍手に迎えられて前までくると、まずiphoneで観客をパシャリ。(観客・笑)荷物持ったまま出てきて、いかにも時間なさそうだったにも関わらず、質問も受けてくれました。
・・・これからも、日本をよろしく。
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