第8話『あたしって、ほんとバカ』

こうなることは、わかっていました。

少しずつ、紐解かれていく。物語ははじまったばかりなのではなく、とっくにはじまっていて、わたしたちはそのつづきを見ているに過ぎないことも少しずつ、わかっていく。ほむらの口ぶりが意図するところも理解していく。



これは、たぶん大きな循環システムなのではないか。
不安定な少女につけこんだキュウべえは魔女の残りカスが食べたいから、少女が魔女になったって一向にかまいやしない。きっと、彼は「この世界の恐怖や混沌を司る魔女は、すぐまた別の新しい魔法少女が倒してくれる」って思っている。きっと、魔女はとびきりの味がする。


もしかしたら、この世界でいちばんきれいで強固なのは理想と現実の境目で、少女が願う「夢」だけなのかもしれない。でも「奇跡」なんて、たとえ起こすことができても、所詮ちっぽけで一瞬のもの。残りの大部分の辛く苦しい時間を生き残る唯一の道は、「奇跡」の記憶を失わず、願いを叶えた己を信じることなのだろう。

不安に飲み込まれ散ってしまうさやかちゃんはごく普通の女の子だ。ごく普通の思考回路とごく普通の精神強度を持つさやかちゃんの存在はこの物語で際立つ。


さやかちゃんは人魚姫だったんだよ。どうせ泡になって消えてしまう。そう思えばいい*1。むかしから、よくあることさ。

*1:さやかちゃんの体から泡が出るシーンは印象的でした